「金壽堂出版」ならではの企画で
出版界できらりと光る存在に


京都外国語大学教授
外国語学部・大学院教授  田所 清克(たどころ きよかつ)先生

 リベラル・アーツに長けた、真の意味の教養人である吉村始さんが、この度、孤軍奮闘されて出版社を興された。その名も「金壽堂出版」。私などには、出版業はまさしく吉村さんにとって、うってつけの、天授の職業のように思われる。
 「金壽」なる言葉は、字面から意味するところはある程度、推し量れるが、吉村さんがその言葉に懸ける想いとその根底にあるコンセプトはおそらく、海原のようにはるかに深大ものに違いない。
 ともあれ、謹厳実直で人間愛にみちたお人柄に加えて、貪欲なまでの好奇心と知識欲を具えたこの人の手からはたして、どんな書籍が生まれるのか、今から楽しみである。
 「山椒は小粒でも…」の諺がある。さながら砂金のように小粒にしてきらりと耀き、えも言われぬ芳香を放つ、金木犀のごとき存在。これが花を愛してやまない私の「金壽堂出版」に対するイメージであり、期待でもある。
 末尾ながら、一人出版社の強みを遺憾なく発揮されて、はや日本では失われて久しい教養の土壌を再び耕す意味で、その急先鋒になって出版文化の普及に努めていただきたく思います。

大志を持って挑戦を

株式会社かもがわ出版
代表取締役会長■■■■■湯浅 俊彦
(ゆあさ としひこ)

 手許に金壽堂出版が初めて刊行した貴重な本がある。よっしー著『カンコ・ハンジャ・白ジイの漢字ワールド探検隊』。よっしーとは吉村始さんのことだが、なかなかよくできている。「世界初! 画期的で国際的な漢字の本」(帯の文)であるかどうかはともかく、32ページの冊子ながら基礎知識から漢字文化圏構想まで分かりやすくまとめられている。
 この本は吉村さんが、かもがわ出版を退職し、高等技術専門校で印刷・デザインを学び、その卒業制作として生まれた。限定10部のうちの一冊である。編集後記に「自分でネタを考えて、入力して、組版して……ああ至福のひととき」とある。小学生の頃から本を作るのが趣味だったというだけに、その喜びはよく分かる。
 一人出版社の強みは、自分で企画し制作し販売することにある。めんどうな会議などもなく、思うままに動ける。しかもそれが趣味なのだから愉しくて仕方ない、と思う。もちろん経営的には大変だろうが、従業員がいるわけではないから気楽なはず。
 ベストセラー『ハリー・ポッター』シリーズを出した静山社はほぼ一人の出版社であった。まだ若い吉村さんには大志を持って挑戦してほしいと思う。私が頂いた限定10部の本がいずれ「お宝」になるかもしれない。それを期待して大事にしておこう。



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煌めく眼のごとくに

立命館大学文学部教授  真下 厚(ましも あつし)先生

 今日、電子メディアが大きな情報源とされ、インターネットによって現実空間の距たりは容易に超えられたかにみえます。現に、この拙文もどこからでもアクセスして読んでいただくことができます。それはたいへん利便ではあります。しかし、そのことによって、一方でさまざまな問題が生じることにもなります。
 文字の規格化や画面の制約は人間の思考方法に大きな影響を与えると思います。また、各国・地方を含めた地域の文化を規格化し、その個性を喪失させ淘汰することにもなります。活字印刷文化から電子メディア文化への移行は否定しようもないことですが、だからこそ地域の文化の多様性を保持し、人間の文化的豊かさを活性化させるべきだと考えます。
 金壽堂出版の吉村さんは、地域相互の文化理解を促進することを目的として、まずアジアの文化を対象に、中国・韓国・台湾などの地域とも連携する出版活動を進めています。また、南米ブラジルの社会・文化の出版にも携わろうとしています。電子メディア文化の圧倒的な潮流のなかで、こうした営みは蟷螂の斧にも似たものかもしれません。しかし、その志は崇高であり、私は心から応援したいと思います。そして、自身も含め、文化的活動に関わる人々の多くが、それぞれこうした一匹の蟷螂でありたいと願うものです。

ぐわんばれ、よしむら

同志社大学文学部教授  廣田 收
(ひろた おさむ)先生

 今は救われがたいほど困難な時代だと思います。どのように生きてゆけばよいのか、まじめに悩めば悩むほど、すぐに立ちゆかなくなってしまう。
 しっかりと考えたり、行動したりする指針となるはずの書物は、殆んど見向きもされなくなっています。言葉はたんなる情報ではなく、人間の生きる証しであってほしい。それが文学であったはずなのに。軽薄な文化に目や心を奪われて、書物離れのはなはだしい時代。幾つか大手の出版者が倒産したり、経営の縮小を余儀なくされる時代に、若さを前面に押し立ててひとり出版社を興そうという吉村さんの志には敬服いたします。しかも、そのまなざしがアジアに向いているというところに感心させられます。確かに、スローガンとしては国際化が叫ばれ、情報化時代というけれども、存外にその中身は貧しいものが多い。
 最近、金壽堂出版から立派な研究書が刊行されたことを耳にしました。実に困難な道をゆく吉村さん・金壽堂出版が次々とよい仕事を続けてゆかれるように願っております。

西宮 一民(にしみや かずたみ)先生

大正13年  奈良県桜井市多武峰にてご生誕
昭和24年  京都大学文学部卒業
平成19年  ご逝去。正五位。
 (皇學館大学元学長/名誉教授)
主要著書  『時代別国語大辞典、上代編』
         (代表者 澤瀉久孝、三省堂)
        『日本上代の文章と表記』(風間書房)
        『古事記』(新潮日本古典集成、新潮社)
        『萬葉集全注巻第三』(有斐閣)
        『古語拾遺』(岩波文庫)
        『上代祭祀と言語』(桜楓社)
        『古事記の研究』(おうふう)
        『古事記 修訂版』(おうふう)



2002年(平成14年)6月16日の古事記学会にて、西宮一民先生から左のお言葉を頂戴しました。「稽古照今」とは「温故知新」と同様の意味だそうです。